2014年1月1日水曜日

オスマン帝国の逆襲 

『百聞は一見にしかず』というが、イスタンブールの壮大さには目を見張るものがあった。その雰囲気はかつての東京を見ているようである。アブドゥラー・ギュル大統領によると、トルコは2050年にはヨーロッパにおいて最大の経済国になるという。アンビシャスな目標であるのは間違いないが、この国の勢いを目のあたりにすると、あながちそれも間違えていないような気になる。

現在、トルコは大型インフラプロジェクトが目白押しである。10月29日にはボスポラス海峡下に海底トンネルが開通し、地下鉄が運航し、安倍首相もその式典に参加した。日本の技術とファイナンスがその大きな役割を担ったという。この壮大な計画は今から150年前のオスマン帝国からの悲願であり、日本企業が貢献した意義は大きい。その他、発電所や橋梁のインフラ建設プロジェクトもあり、日本の事業者の参加が決まったという。安倍首相のトップセールスが見事に成功したということであろう。

このようにトルコは国家プロジェクトを託すほど日本を信頼しているようだが、イスタンブールに行くと、如何に親日的であることがわかる。グランバザールのアクセサリー屋のおじさんが、鈎針で縫った手芸について日本語で流暢に説明した際には驚嘆した。トルコ語はアルタイ系の言語と言われているが日本語に近いのだろうか。トルコ語は聞いたところ少し東北弁にイントネーションが似ているような気もした。

さて、このトルコであるが、オスマン帝国時代は西アジア、北アフリカ、バルカン半島に及ぶほど、強大な国家であった。第一次世界大戦後に崩壊したが、1923年にトルコ共和国として生まれ変わり、100年近く経った今、オスマン帝国の反撃が始まっている。政治的な不安定さは否めないが、この多くの若い人口を擁し、中間層が活発に消費を行っている国は、今後益々成長するであろう。

かつての帝国時代の壮大さはトプカピ宮殿に行くと、一目瞭然である。この世界中から装飾品や宝石が集められた宮殿はスルタンの住居のみならず、行政の中心としても重要な場所であることがわかる。更に、イチ・オーランと呼ばれる幹部候補生が高度な教育を受けていた場所も見学できる。そこは世界中からの候補生が集まり、宗教や出身地とは関係なく、能力によって登用されたという。

チュニジアもかつてはオスマン帝国の傘下にあった。地中海では、15世紀の末頃から、レコンキスタを完了したスペインとオスマン帝国の間で覇権が争われる。16世紀初頭にオスマン帝国がチュニジアを征服するものの、1535年にはスペインのカルロス5世が首都のチュニスを占領する。しかし、その後、1574年にはオスマン帝国がチュニスを奪還しており、チュニジアはその後約300年間、オスマントルコの影響下に置かれることになる。

現在でもチュニジアにおいては、オスマン帝国時代の名残が見受けられる。チュニジアの国旗は、新月と星をデザインしたオスマン帝国の国旗をもとにしており、数々の建築物やモスク、宮殿においてもその影響が垣間見れる。メディナにあるダルエルジェルドというレストランは、ベイが保有していた建物であるが、ここではシャンデリアの豪華な装飾が施され、天井画、オリエンタルカーペット、アンティーク家具や、タイルや彫刻で飾られた壁があり、かつての帝国時代の雰囲気が味わえる。

チュニジア人の中にはトルコ系の血が入っている人も多い。1534年にスペインからの攻撃を防ぐために1万人程のトルコの戦士がチュニジアに移っており、その後、混血が進んだという。先祖がトルコ人であるというチュニジア人の話を何回も聞いたことがあるし、一説によるとチュニジア人の20%から25%はトルコ系の血が入っているともいう。

どうやら、私は無知のあまり、この偉大な国を過小評価していたようだ。1923年、トルコ共和国の建国の父であるケマルパシャは日本を見習って国家の再建を決心したようであるが、今後は、日本やチュニジアがこの国の勢いを借りて共に成長すべきであろう。安倍首相の狙いの鋭さを現地に訪問して改めて認識したところである。

【参考資料】
http://www.abysse.co.jp/world/flag/africa/tunisia.html
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4563237.html
http://en.wikipedia.org/http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/4563237.htmlwiki/Turks_in_Tunisia
http://www.hurriyetdailynews.com/turkey-will-be-europes-strongest-economy-in-2050-turkish-president-gul.aspx?pageID=238&nid=42651
http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_medieval_Tunisia
http://yamazakijirounew.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/251031-683a.html
http://en.wikipedia.org/wiki/Culture_of_Tunisia